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ステイホームにおすすめ:ファンタジーホラーの天才、恒川恒太朗の名作6選

コロナウイルス感染拡大の影響で、家で過ごす時間が長くなっている方が多いのではないでしょうか。

私は医療従事者なのでステイホームではありませんが、もし時間が与えられるのなら読書や映画鑑賞がしたいです。

色々な過ごし方があると思いますが、「読書でもしようかな」と思っている方に、

BookDogオススメの本を紹介します!

まずはファンタジーホラーの天才、恒川恒太朗さん。

1973年生まれ 東京都出身
29歳の頃に沖縄県に移住し、塾の講師をしながら執筆活動を始める

2005年 デビュー作「夜市」で第12回日本ホラー小説大賞受賞
2014年「金色機械」で第67回日本推理作家協会賞受賞

 

 

位  〚月夜の島渡り〛より「弥勒節」

 

沖縄に移住した恒川さんは、沖縄が舞台の作品もたくさん書いています。
「弥勒節」が収められている「月夜の島渡り」は、「私はフーイー」を改題し文庫本にしたもの。

臨終の際に、ユタが弥勒節を胡弓で演奏する習慣のある島。
見知らぬ老女から胡弓を譲り受け、島の怪奇ヨマブリに妻の命を奪われた男の数奇な物語。

「弥勒節(みるくぶし)」は八重山で祝宴の終わりに演奏される歌だそうです。
歌詞の内容はこちら。

大国の弥勒様が我々の島にやってきた
どうぞ島をお治めください

弥勒様の世がやってきた
遊ぶ時は遊び 踊る時は踊りましょう

弥勒様の世がやって来るしるしは
十日越し降る 夜の雨
どうぞ御世のしるしを示してください

 

「弥勒様」は釈迦入滅後56億7千万年後にこの世に出現し、釈迦仏が救済しきれなかった衆生を救う来訪仏「弥勒菩薩」のこと。沖縄においては東方の海上にある神々が住む「ニラカナイ」より、年に一度船に五穀の種を積みやってくる、豊穣をもたらす神とされています。

検索すると三線で演奏したものしか見つかりませんでしたが、スローテンポな沖縄独特の音階と不思議な響きの沖縄の方言が、なんとも耳に心地よい曲です。

物悲しい胡弓の音色と溶け合えば、なるほど、魂をあの世に導く音色に相応しいのかも知れません。

ひとたびページをめくると、生ぬるい沖縄の風が体に纏わりついてくるようです。
沖縄では、現代の日本では忘れ去られた、神話や言い伝えや迷信が今でも人々と共存しているのかもしれませんね。

かなり短い短編小説ではありますが、弥勒節の響きや、夜になると昼間とは別の姿を見せる沖縄の浜辺の姿に心を掴まれ、6位にランクイン。

bookdogくん
bookdogくん
沖縄の空気感が好きな人におすすめだよ。

竹富島の夜の桟橋からの帰り道、亀甲墓が並ぶ墓地で感じた得体の知れない怖さを思い出しました。

 

5位 〚雷の季節の終わりに〛

 

恒川さんと言えば短編、という先入観をいい意味で裏切ってくれた作品。

冬と春の間に「雷(神鳴り」という5つ目の季節がある村「穏」。
雷期には鬼が人を拐い、風わいわいが人に取りつくという。
大半の人々は家の外で起こっている現実を知ることなく、恐怖におののき、家の中でただ息を潜めて春が来るのを待つのです。

bookdogくん
bookdogくん
何だか今の状況みたい。。。

穏の秘密を知ってしまったため、村から追われた少年の壮大な冒険物語。

悪人に見える者の善意と、善人に見える者の悪意。絵にかいた悪人よりも、集団同調心理による悪意に背筋が凍りました。

世界観が独特で面白く、文章は美しく繊細。異世界にどっぷりハマることができますよ。
穏の風景描写は、日本人が持っている郷愁を不思議にかき立てます。

どこかに「穏」が存在するのでは?と、雷が鳴るたびに空を見上げてしまいます。

bookdogくん
bookdogくん
僕は風わいわいに取り憑かれたいな。

 

4位 〚竜が最後に帰る場所〛より「夜行の冬」

 

好奇心から、「夜行様」が錫杖を鳴らして歩く夜行の列に加わった無職の男。
皆「どこへ行く」とも知らず、「なぜ歩く」かもわからない。
一晩中歩き続けて朝を迎え、自宅に戻ると別の人生がそこにある。

背後の闇の中では死霊の群れが脱落者を待ちかまえており、一行から遅れた者は、闇に取り込まれ消滅することを意味しています。
けれど一度夜行に参加したものは、闇に取り込まれるリスクを背負いながら、さらに別の人生を求めて参加し続けるのです。

人間の強欲さと、欲に抗えない卑しさを映し出した作品ですが、不気味で幻想的な世界観が素晴らしかった。

冬の夜に錫杖の音が聞こえてきたら、あなたはどうしますか?

 

3位 〚秋の牢獄〛より「神家没落」

 

この短編集全体のテーマは「囚われ」。
「秋の牢獄」は「時」に。
「幻は夜に成長する」は「能力」に。
「神家没落」は「家」に囚われる。
BookDogは表題作よりこちらの方が好みでした。

数百年も昔から、様々な場所に出没しては消え去る不思議な家。
その家に囚われた者は、誰かにその家を引き継ぐまで家から出ることができない。
ひょんなことから家守となってしまった男は、その家から出る方法を必死に考え出し、見知らぬ男にまんまとその家を押し付けますが・・・。
家から解き放たれた男は、ゆったり流れる静かな時間と自由を失ったことを後悔し始めた。

bookdogくん
bookdogくん
囚われたら出たい、出れたら後悔。
人間って勝手なものだ

その後、日本各地で不思議な事件が起こり始め、主人公はあの家を追いかけます。
神隠しってこの家が起こしてきたのかな…と妄想が止まらない作品。

 

2位 〚夜市〛より「風の古道」

 

表題作「夜市」が素晴らしい作品であることは疑う余地もありませんが、BookDogの心を鷲掴みにしたのは収録作である「風の古道」です。

子供が道に迷い、見知らぬおばさんに手を引かれて連れて行かれたのは、神々や異形の者たちが行き交う異世界の古道。
10代になって友達と見つけたその世界に、再び興味本位で飛び込むが、今度は出口が見つからない。
古道から永久に出られない者、外の世界と自由に行き来し商売する者。
皆それぞれの哀しき物語を背負っており、古道の掟に従って生きている。

子供の頃は今よりもっと身近に感じていた、奇妙で不思議で怖い世界。
本当にあると信じていた世界。
小さな頃の妄想が具現化されたような世界に、あっという間に引き込まれました。

あの草むらの向こうに、あの林の奥に、あの公園の裏側に、古道への入口があるのかもしれません。

 

 

1位 〚無貌の神〛より「死神と旅する女」

 

江戸川乱歩の「押絵と旅する男」を彷彿とさせるタイトルですが、「押絵~」が淡々とした印象なのに比べて、こちらは赤い竜巻が通って行ったような鮮烈な印象。

死神に魅入られた少女は、死神と一緒に旅をしながら人間を次々と斬り殺す。
斬っては先を急ぎ、また斬っては次を目指す。
なぜ斬るのか?相手が何をしたというのか?この旅はいつ終わるのか?
決して疑問を持ってはならない。
死神との契約が終わる時、真実が明らかとなります。
死神は殺人鬼なのか、平和の使者なのか。

カオス理論がテーマとなった、ゾクっとする物語。ラストの伏線に回収も見事!
読後心に強烈な余韻を残す、至高の作品。読んで後悔はさせません。

 

恒川氏の作品は、和風ファンタジーホラーな作風が独特で面白く、文章は非常に読みやすく美しいです。

他にも、タブレットを片手に壮大な世界を広げていく、まるでRPGのような「スタープレイヤー」。
スターウォーズのC-3POを彷彿とさせる黄金のロボットを中心に、いくつもの時代が織り上げられ、滅びゆくまでの物語。日本の時代劇とSFの融合「金色機械」もおすすめです。

素晴らしい作品が多すぎて、今回順位をつけるのがとっても難しかったです。
おすすめ5選にするつもりが、絞り切れず6選になってしまいました。

どれも名作揃いなので、ぜひ一度手に取って読んでみて下さいね。

時には日常を忘れて、異世界に迷い込んでみましょう。

 

bookdogくん
bookdogくん

近い将来、往年の有名作家達と肩を並べて教科書で紹介されるんだろうなぁ。

恒川光太郎氏の代表作、テストに出るよ!

ABOUT ME
bookdog
Netflixが好きなBOOKDOGです。 主に「ルポールのドラァグレース関連記事」「ブログ作成のお役立ち記事」をゆるりとUPしています。 関係ないことも時々呟きます。