あなたは今、悩みを抱えていますか?
それはどのような悩みでしょうか。
もし、その悩みがすべて「自分の心のあり方によるもの」だと言われたらどう思いますか?
生きることには「苦しみ」が伴う
苦しみには「原因」がある
苦しみは「取り除くことができる」
苦しみを取り除く「方法」がある
仏教の世界では、これを”4つの心理”(四聖諦)と呼んでいます。
これは「何かを信じれば救われる」という宗教ではなく
「こう考えれば、悩み・苦しみを抜け出せる」というシンプルな思考法です。
2015年発表
Amazonの法話カテゴリー1位。
494のレビュー投稿中、4.4と高評価です。
(2020.3月現在)
本が大好きなBookDogですが、本は図書館で借りるか、読んだら売るかのどちらかにしています。
けれど、この本は珍しくBookDogが本棚に並べている選ばれし一冊です。
自己啓発本といえば、「嫌われる勇気」や「7つの習慣」などが有名ですよね。
それらも読んでみましたが、どの本にも人間関係を円滑にし、人生を幸福に導くというテーマが含まれていました。
けれど、私が仏教圏に住む人間だからでしょうか。
欧米的アグレッシブな自己啓発本のように、無理にテンションを上げたり鼓舞しない、静的な解決法を教えてくれるこの本の内容が一番スッと心に入ってきました。
悩んだ時に必ず手に取るこの大切な本を、みなさんに紹介したいと思います。
作者:草薙龍瞬さんってどんな人?
1969年奈良県出身
中学中退後、16歳で家出し上京
高校へは通わず、大検を経て東京大学法学部を卒業。
37歳でインド仏教指導者の下で得度出家
インド、ミャンマー、タイに仏教留学
ミャンマー国立国際上座仏教宣教大学専修課程修了し、現在は宗派・伝統に属さない独立出家僧として活躍されています。
草薙龍瞬公式HP
人はなぜ悩み、苦しむのか
1.承認欲が満たされないから
「自分を認めてほしい」「注目してほしい」「愛してほしい」「評価してほしい」というのは全て承認欲です。
承認欲は現代を生きる私たちにとって、最も切実なテーマといえるでしょう。
子供の頃は「親に愛されたい」という素朴な欲求を持っていますが、成長すると「褒められたい」「優等生でいたい」「人気者になりたい」という自意識に変化します。
大人になれば「人に尊敬されたい」という上昇欲、「自分は優れている」という優越感やプライド、逆に「自分はダメな人間だ」という負い目や劣等感を抱きます。
一見違うように見えるこれらも、全て承認欲から来るものです。
この欲求を持った状態で外の世界に反応すると、負い目や劣等感や不満を生み出し、苦しみが生まれます。
2.判断するから
判断とは、決めつけや思い込みのことです。
「失敗した」「最悪」「ついてない」「うまくいかないのでは?」「あの人はキライ、苦手」というのが判断です。
判断には、分かった気になれる気持ちよさと、自分は正しいと思える(承認欲を満たせる)快楽があるため、人間は判断することが大好きです。
しかし、「判断は」快楽を得られる反面、「執着」となり心を苦しめるのです。
3.妄想に囚われるから
「笑われているのではないか?」「嫌われたのではないだろうか」「悪口を言われているのではないだろうか」「今回の件で信用を失ってしまったのではないだろうか」
これらは全て、自分へのこだわりが生み出す妄想です。
妄想に過ぎない「判断」に執着して、自分や相手を苦しめるのです。
「判断」と同じように、それはただの「勘違い」なのです。
4.記憶に反応するから
その場を離れてもなお、相手のことが頭から離れずモヤモヤ・イライラしているのなら、その原因は「相手」ではなく自分の「記憶」です。
過去を思い出して、「記憶」に反応して、新しい怒りを生んでいるのです。
5.他人の目を気にするから
なぜ他人の目を気にするのでしょう?
「この人は自分を好きでいてくれる」「高く評価してくれる」と信じられれば、他人の前でも安心していられますよね。
「他人の目を気にする」という心理もまた、承認欲なのです。
では、どうすれば悩みや苦しみから抜け出せるのか
1.心の反応を理解し、認める
「自分には満たされていない承認欲があるのだ」
「この不満は、承認欲が満たされていないために起こるのだ」
と、自分の心の反応を客観的に理解し、認める。それだけで心は軽くなります。
2.確かめようのないことは追いかけない
どんな思いも「妄想に過ぎない」ことをはっきり自覚する。
「妄想」が真実かどうか確かめる術はありません。確かめようのないことは放っておきましょう。
3.過去は「忘れる」。記憶を相手にしない
心は一日に「七万個」もの想念を思い浮かべます。「約1.2秒で1個の思い」です。
心というのは、それぐらい目まぐるしく回転し続けているのです。
心が無常なら、人も当然無常です。
そう理解すると、「過去にこんなことをした、こんなことを言われた相手」はこちらの「執着」。自分も相手も「昨日とは別の新しい人間」だと思って向き合うことも選べるのです。
ただ、それが難しい場合もありますよね。
特定の人との関りが悩みを長引かせているのなら、いったん「関りを断ってみる」というのも有効です。「過去の記憶」にも「現在の相手」にも反応しなくなるまで、「物理的」にも「時間的」にも距離を置くのです。
4.自分を否定しない
人生に「あやまち」「失敗」はつきものです。肝心なのは、その時「どう対応するか」ということです。
落ち込まない。凹まない。自分を責めない。振り返らない。悲観しない。
それよりも、今を見すえて、正しく理解して”ここからできること”に専念するのです。
「自分は優れている」とも「劣っている」とも「等しい」とも判断しない。
誰に何を言われても、自分の価値を判断しないことが大切です。
悩みや苦しみから抜け出すエクササイズ
この本のいい所は、理屈を並べ立てるだけではなく、解決するための練習(心のエクササイズ)を紹介してくれるところです。
なるほど、「反応しない練習」というタイトルがついているのも頷けます。
その中で、私が実践している方法を紹介します。
ラベリング
「わたしは緊張している」「心がざわついている」「頭が混乱していて落ち着かない」など、目をつぶって確認してみると心が落ち着きます。
仕事中でも、家族といる時も心の状態を意識します。
「イライラしているな」「考えがまとまらないな」「疲れを感じているな」「今判断したな」「これは妄想だな」というように、客観的に確認します。
心の状態にぺたりと「名前」を貼って、言葉で心の状態を確認しましょう。
自己肯定感を高めるエクササイズ
① 外を歩き、肉体がキャッチする「感覚」に意識を向ける
② 広い世界を見渡す
③ 「わたしはわたしを肯定する」という言葉をかける
この3つのエクササイズを同時に行えるのが、登山です。
登山は私の趣味の1つですが、山に登るたびに心が整うのを実感しています。
登りはじめは、日々の悩みや、悲しかったこと、悔しかった出来事、後悔している出来事などで頭がいっぱいです。
ところが歩いているうちに、邪念は禅問答に変わっていきます。外側の自分と、内側の自分との白熱した禅問答。
「作麼生(そもさん)」「説破(せっぱ)」と、声に出してブツブツ言っている時もあるかもしれません。(ちょっと怖い)
ひとしきり盛り上がりを見せた後、頭の中の禅問答は小さくなって消えていきます。
感じるのは頬を撫でる風や鳥のさえずり、新緑や土の匂い、靴底がとらえる登山道の感触。
心地よい疲労感の中、目的地に向かってただ足を前に運んでいる。
その時感じているものだけが、現実なのです。
やがて心は無に近づき、静かで満ち足りた時間に包まれます。
頂上に辿りつけば「達成感」「自己肯定感」「幸福感」が押し寄せてきます。
山頂から雄大な景色をのんびりと眺めているうちに、色んなことがどうでもよくなり、下山時は心も足取りもすっかり軽やかになっています。
悩みがあるのなら、登山は本当におすすめですよ。
今日紹介したのは、書かれていることのほんの一部です。
悩みを抱えているあなたが求めている答えが、この本のどこかに書かれていることでしょう。